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第二の鎖国

2020-07-30

『Get Back! 30's / 1933年(s08)』
 
(国際連盟脱退)

○2.24 [スイス] 国際連盟が対日満州撤退勧告案を可決。松岡洋右日本代表は連盟への決別を述べ退場する。(3.27 正式に脱退を表明)
 

 1933年2月、国際連盟総会は日本の満州からの撤退勧告案を可決、翌3月日本は連盟脱退を通告した。日本は1931年、現関東軍が満州事変を起こし満州全土を制圧、1932年3月に傀儡政権満州国を建国した。中華民国政府は国際連盟に満州国建国の無効と日本軍の撤退を求めて提訴、国際連盟はリットン調査団を派遣した。リットン報告書は日本の侵略と認定し、国際連盟総会ではそれに基づいた「中日紛争に関する特別総会報告書」が可決され、3.27に日本は正式に国際連盟を脱退を表明した。
 

 「国際連盟 "League of Nations"」は、第一次世界大戦の反省を踏まえて、アメリカ合衆国大統領ウッドロウ・ウィルソンが「国際平和機構の設立」を提唱し、パリ講和会議でのヴェルサイユ条約など各国間の講和が成立すると、ヴェルサイユ条約の発効日である1920年1月10日に正式に発足した。
 

 しかし提案者ウィルソンのアメリカが上院の反対で加盟せず、当初から不安定な船出となった。イギリス・フランス・日本・イタリアの列強が常任理事国となり、敗戦国のドイツや共産主義国家ソヴィエトは、のちに加盟を許された。しかし日本と並んでナチスドイツが、さらにイタリアが脱退すると、国際機関としての無力性が露呈し、第二次大戦の勃発を抑止することができなかった。
 

 日本は脱退まで常任理事国であり、国際連盟事務局次長には新渡戸稲造が選ばれるなど中核的役割を担っていた。日本はヨーロッパから遠く位置し、ヨーロッパ諸国間の紛争に比較的利害が少なく、ヨーロッパでの紛争に対しては公平な第三者の調停役としてふるまえた。
 

 しかし、大陸に満州国を建国させ実質支配者となると、明確に欧米の利害と衝突し「中国の主権侵害」と認定されるに至る。日中紛争の特別総会報告書が圧倒的多数で承認されると、松岡洋右日本全権は「もはや日本政府は連盟と協力する努力の限界に達した」と表明し、総会会場を去った。新聞は「連盟よさらば!我が代表堂々退場す」などと報じ、帰国した松岡洋右全権は、あたかも凱旋将軍のごとく国民の大歓声によって迎えられたという。
 

*この年
ヨーヨーが爆発的な人気。再生時には月産500万個。各地で競技会も/膝下5cmのロングスカート流行/綿布輸出量世界一に
【事物】ナイター設備球場(早大)/入試テスト屋/自動車の仮免
【流行語】非常時/男装の麗人/転向
【歌】島の娘(小唄勝太郎)/十九の春(ミス・コロンビア)/天竜下れば(市丸)
【映画】滝の白糸(溝口健二)/丹下左膳(伊藤大輔)/巴里祭(仏)/制服の処女(独)
【本】谷崎潤一郎「春琴抄」(中央公論)/女の一生(山本有三)/西田幾多郎「哲学の根本問題」
 

*ブログで読む>https://naniuji.hatenablog.com/entry/20160923

「治安維持法」の時代

2020-07-29

『Get Back! 30's / 1933年(s08)』
 

(小林多喜二 拷問死)
○2.20 [東京] 日本プロレタリア作家同盟の小林多喜二(31)が検挙され、築地署で拷問のすえ死亡する。
 

 1929年に『蟹工船』を『戦旗』に発表し、小林多喜二は一躍プロレタリア文学の旗手として注目を集めるが、同時に警特別高等警察(特高)からも要注意人物としてマークされ始めた。『一九二八年三月一五日』『蟹工船』などの発表がもとで、北海道拓殖銀行(拓銀)を解雇され東京に転居、日本プロレタリア作家同盟書記長となるとともに、共産党とのつながりを深め、『蟹工船』の件で不敬罪及び治安維持法で起訴され投獄される。
 

 1931年、保釈出獄後に非合法の日本共産党に正式入党し、危険思想取締りが強化されるとともに地下活動に入った。1933年2月20日、共産青年同盟に潜入していた特高スパイに騙され、指定された場所におもむき待機していた特高によって逮捕される。同日築地警察署内においての取調べで、ステッキで打擲された上さらに殴る蹴るの暴行による拷問で、その夜死亡が確認された。
 

 先の『一九二八年三月十五日』は、1928年共産党員らを全国で一斉検挙した「三・一五事件」の弾圧を題材にしたもので、この中での拷問の描写が特高の恨みを買い、逮捕当日の性急な拷問死につながったともされる。警察当局は翌21日に「心臓麻痺」による死と発表したが、翌日遺族に返された小林の遺体は、全身が拷問によって異常に腫れ上がり、全身に内出血のあるひどいものであった。
 

 特別高等警察(特高)は、国体護持のために無政府主義者、共産主義者、社会主義者、および国家の存在を否認する者を査察・内偵し、取り締まることを目的とした日本の政治警察とされる。その沿革は1910年の幸徳事件らの「大逆事件」にまでさかのぼる。1928年「三・一五事件」をうけ、「赤化への恐怖」を理由に全府県に特別高等課が設けられ、全国的な組織網が確立された。
 

 この時期は共産主義者や共産党員を取締りの対象としていたが、日本が戦時色を強めるにつれ、挙国一致体制を維持するための障害として、反戦運動や急進的な新興宗教や自由主義者などまでも、反政府的とみなし監視や取締りが行われるようになった。第二次大戦後、GHQにより治安維持法とともに特高は廃止されたが、その後も「公安警察」としてその基本的な任務は継承されている。
 

 なお2008年には『蟹工船』が再評価され、文庫の『蟹工船・党生活者』がベストセラーになり、映画化もされるという小林多喜二ブームが若い世代を中心に起こった。若い世代における非正規雇用の増大と働く貧困層の拡大、低賃金長時間労働の蔓延などの社会経済的背景にあり、ブラック企業が「蟹工船」に例えられるなどした。
 

*この年
ヨーヨーが爆発的な人気。再生時には月産500万個。各地で競技会も/膝下5cmのロングスカート流行/綿布輸出量世界一に
【事物】ナイター設備球場(早大)/入試テスト屋/自動車の仮免
【流行語】非常時/男装の麗人/転向
【歌】島の娘(小唄勝太郎)/十九の春(ミス・コロンビア)/天竜下れば(市丸)
【映画】滝の白糸(溝口健二)/丹下左膳(伊藤大輔)/巴里祭(仏)/制服の処女(独)
【本】谷崎潤一郎「春琴抄」(中央公論)/女の一生(山本有三)/西田幾多郎「哲学の根本問題」
 

*ブログで読む>https://naniuji.hatenablog.com/entry/20160923

御堂筋決戦

2020-07-28
今から56年前のことです。 4対3で南海ホークスの日本一決定。
「御堂筋シリーズ」出場する両チームの親会社が鉄道会社同士、という対戦は初めてとなった。
また南海にとってこれが最後の日本一となった。次の日本一まで35年の月日が流れた。
1964年の日本シリーズは、196410月1から10月10まで行われた、
1962以来2年ぶりのセ・リーグ優勝となった阪神タイガースと3年ぶりのパ・リーグ優勝となった南海ホークスによる第15回プロ野球日本選手権シリーズである。
関西決戦(御堂筋シリーズとして10月に阪神甲子園球場大阪球場の2球場で行われた。
この年は東京オリンピックの開催に間に合わせるように日程調整され、またシリーズ史上初のナイトゲームで行われた。翌年から1993までの間、日本シリーズは再び全試合デーゲームで行われた。
このように、大阪球場は3試合とも満員の盛況(第4戦だけ3万人を越えた)となったが、対照的に5万人を収容する甲子園ではスタンドに空席が目立ち、阪神の優勝がかかった第6戦でようやく25000人を越えるも、他3試合は2万人割れ、特に第7戦の15172人は日本シリーズ最終戦の観客数としては歴代最少となった。
なお、この年の大会の延長戦規定は特例として「22時30分を過ぎた時点で次のイニングに入らない」とした(通常は日没時刻まで続けるとしていた)。

自殺の名所

2020-07-28

『Get Back! 30's / 1933年(s08)』
 

(三原山投身自殺) 
○2.12 [東京] 大島の三原山で、実践女学校専門部の生徒が投身自殺をする。以後、三原山は自殺の新名所となる。
 

 1933年2月12日、実践女学校専門部国文科に籍を置く松本貴代子(21)が、伊豆大島の三原山火口から投身自殺する。貴代子は万葉集や金塊集を愛読する耽美的な文学少女であり、また潔癖主義者で結婚を嫌悪するなど厭世的な人生観を持っていて、日ごろから死への願望を友人たちに漏らしていたという。
 

 この日の朝、松本貴代子と親友の富田昌子(21)が三原山火口を目指して登っていた。日ごろから自殺願望を口にしていた貴代子は、昌子に自分の投身自殺の立会いを依頼していた。火口に到着すると貴代子は懐中から遺書を取り出し昌子に手渡して、そのまま噴煙の中に身を投げた。そのあと昌子は、取り乱し彷徨っているところを地元の人に保護された。
 

 さらには、1か月前の1月9日、富田昌子は、実践女学校の上級生真許三枝子(23)の自殺にも立会っていたことが判明する。ただ昌子は、火口近くまで同行して、三枝子に他言しないことを約束させられ、そこから下山をうながされたという。火口への投身自殺は遺体が見つからないことが多く、三枝子の自殺も昌子の供述から判明した。
 

 昌子はそのことをうっかり貴代子に漏らしたため、自分の自殺も見届けてほしいと迫られ、断り切れなかった側面あったようだ。さらに同級の友人に貴代子に思い止まるよう説得を頼むなど、それなりに引き留める努力もしたようであるが、結局は友情と同情に引きずられて三原山まで同行したのかも知れない。
 

 当初「女学生の同性心中」などと書いていた新聞は、これらの事実が判明するにいたって「死の立会い女」としてセンセーショナルに報道した。自殺より富田昌子の挙動に世間の注目が集まり、変質者、狂人といった罵倒が浴びせられるようになると、昌子は精神に変調をきたし、4月29日に実家で変死する。世間の非難を気に病んでの自殺とも、持病が悪化したためともされる。
 

 松本、真許の自殺の真相とともに、二度も親友の自殺に立会った富田の心の謎は、富田の変死と共に闇に消えた。元々自殺の名所だった三原山は、この事件の報道とともに一挙に自殺者が殺到し、この年、900人以上の人が飛び降り自殺したとされるが、未発見の遺体を含めれば千名を超すと思われる。その比率はなぜか男性が圧倒的に多く、女性の5倍以上というのは、どのような心理によるものだろうか。
 

 高橋たか子『誘惑者』は、この事件をモデルに同行者富田昌子の心理に焦点を当てた作品である。
 

*この年
ヨーヨーが爆発的な人気。再生時には月産500万個。各地で競技会も/膝下5cmのロングスカート流行/綿布輸出量世界一に
【事物】ナイター設備球場(早大)/入試テスト屋/自動車の仮免
【流行語】非常時/男装の麗人/転向
【歌】島の娘(小唄勝太郎)/十九の春(ミス・コロンビア)/天竜下れば(市丸)
【映画】滝の白糸(溝口健二)/丹下左膳(伊藤大輔)/巴里祭(仏)/制服の処女(独)
【本】谷崎潤一郎「春琴抄」(中央公論)/女の一生(山本有三)/西田幾多郎「哲学の根本問題」
 

*ブログで読む>https://naniuji.hatenablog.com/entry/20160923

「いのち」は誰のものか?

2020-07-25

「安楽死させてほしい」
全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALSの51歳女性患者の依頼を受け、京都市の自宅に出向いて薬物を投与し殺害したと、昨日のニュースを見てびっくりしました。
女性はSNSに「安楽死させてほしい」などと投稿していたようです。
彼女は神経難病で、その道しか見出せなかったでしょうが、それでも、生きて欲しいな、、。
私の母は、病気もなく、老いていきたくない理由で安楽死を独断!

 

未だにその決断した母を許せない私です。

「生と死」の有り様が問われる課題を考える機会になりました❗️

「命」は誰のものか⁉️を明らかにする時だと感じます。
自分の命だから自分で決めるという、命の私物化を助長してしまうのではないかという疑問です。
私のいのちは私のいのちであるままに私のものという限定を越えた尊厳を持っているのです。

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