仏教美術
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京都世界遺産を深掘り【07.宇治 平等院】
聖地 南山城 ―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―
京都府の最南部、奈良市に隣接する地域は旧国名の山城国にちなんで、いま「南山城」と呼ばれています。なだらかな山間を木津川が流れる風光明媚な地であり、仏教の伝来後、7世紀にはこの地域でも寺院の建立がはじまりました。
南山城が歴史の表舞台に登場するのは、聖武天皇の恭仁京造営によってであり、木津川への架橋や寺院の建立などに行基の活躍がありました。平城京から長岡京・平安京への遷都以降も南山城は新旧両都をつなぐ回廊的な役割を果たす地域として、重要性を増すことになります。東大寺や興福寺といった奈良の大寺との深い関わりのなかで寺院があいついで建立され、また木津川流域の山々は俗世を離れた聖地として山岳修験の拠点とされました。
鎌倉時代には、はじめ興福寺に学んだ解脱上人貞慶が笠置寺から海住山寺へと拠点を移し、釈迦如来や弥勒菩薩、観音菩薩に対する信仰を深めるとともに、南都の戒律復興に努めたことが特筆されます。さらに江戸時代には、各地で念仏を広めた袋中上人が晩年に瓶原(木津川市加茂町)を拠点とするなど、南山城は各時代を通じて文字どおり日本仏教の聖地でありつづけました。
本展は、5か年に及ぶ保存修理が完成した浄瑠璃寺九体阿弥陀像のうち2軀を修理後初公開するとともに、その優美な姿を寺外で拝することのできるまたとない機会となります。さらに南山城とその周辺地域の寺社に伝わる仏像や神像を中心に、絵画や典籍・古文書、考古遺品などを一堂に展観することで、この地に花開いた仏教文化の全貌に迫ります。多彩な作品を通して南山城のゆたかな歴史と文化を再認識していただくとともに、緑深いこの地域にいまもなお受け継がれる聖地の息づかいをご堪能ください。
日本最古刺しゅう復元 奈良・中宮寺に奉納、一般公開へ
被衣とは頭からかぶる着物のこと。絹製で着丈は約90センチあり、同寺に伝わる聖徳太子二歳像(13世紀)がまとう。紫色の羅(ら=薄い網目状の織物)に鳳凰(ほうおう)や亀、天人、日月などの図像が色鮮やかな糸で表現されている。奈良国立博物館の三田覚之主任研究員による監修のもと、古代の素材や技法、色調を復元し京都市にある長艸氏の工房で6人がかりで仕立てた。
長艸、三田両氏は約20年前から繍帳の復元研究に取り組んでおり、中宮寺が聖徳太子二歳像の被衣を新調するのを機に作成した。奉納に先立つ5月17日、奈良に私的旅行で訪れた上皇ご夫妻がほぼ完成した状態を同寺で観賞されたという。
長艸氏によると、復元した刺しゅうは現代の糸と違って強い撚(よ)りをかけているのが特徴で「生地が硬く、再現が難しかった」。三田主任研究員は「一歩ずつ研究を積み重ねてきた成果を形にできた」と話している。