モンスター井上
【 ボクシング編 】
「なに、このパンチ…ヤバいな」
井上尚弥のワンツーは「硬い塊をぶつけられる感覚」
「まるでディナー帰りのような顔」
「怪物と最も拳を交えた男」の目に、スーパーバンタム級2戦目のモンスターはどう映ったのか。12月26日、井上尚弥がマーロン・タパレスを圧倒し、10回KO勝利を収めた。井上のプロテストの相手役など長らくスパーリングで拳を交えてきたのが、元日本2階級制覇王者の黒田雅之だ。タパレス戦のキーになった“3つのポイント”を中心に解説してもらった。《NumberWebインタビュー全2回/前編から続く》
「負けたかと思った」
<初出:Number990号2019年11月14日発売:肩書は当時のもの>
井上尚弥が2階級で4団体統一、史上2人目…スーパーバンタム級王座統一戦
ボクシングの世界スーパーバンタム級主要4団体王座統一戦が26日、東京・有明アリーナであり、井上尚弥選手(30)=大橋=がマーロン・タパレス選手(31)=フィリピン=に勝ち、史上2人目となる2階級での主要4団体王座統一を果たした。試合後の井上選手の記者会見での主なやりとりは次の通り。
「ここは通過点。次の一戦へ」
ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体王座統一戦は26日、東京・有明アリーナであり、井上尚弥選手(大橋)が史上2人目となる2階級での主要4団体王座統一を達成した。所属ジムの大橋秀行会長の試合後のコメントは次の通り。
2階級4団体制覇を全部KOで勝った。今日、判定勝ちとKO勝ちでは全く違うものになったので、KOで勝ったのは大きい。この状況でああいう試合ができるのは、相変わらず、井上尚弥、すごいと実感しました。今日は(弟で世界ボクシング協会=WBA=バンタム級王者の)井上拓真の誕生日だった。すごいプレゼントになった。ほんとに弟思いの兄だと思いました。
史上2人目の2階級4団体統一に成功した井上尚弥の快挙に、米メディアは絶賛の嵐だ。米スポーツ局ESPNは「井上はただ強敵に勝っているだけではない。彼は自分の部門で最高のファイターを打ち負かしている」との見出し記事を掲載。記事を執筆したマイク・コッピンジャー記者は「井上の偉大さを一言で言い表すのは困難。言い訳が必要ない。ただ彼は勝つだけ」などと大絶賛した。
同局が独自選定するパウンド・フォー・パウンド(PFP=階級超越の最強選手)でも井上は今年7月に史上初の2階級での4団体統一に成功したテレンス・クロフォード(米国)に続き、2位にランクされるが「井上が1位であるという十分な議論がある」と強調した。また創刊100年の歴史と権威を誇る米老舗専門誌ザ・リングは「ファイター・オブ・ザ・イヤー(年間MVP)の有力候補」と高く評価。ザ・リングが最初に選定開始したPFPランクも「誰が年間MVPとPFP1位にふさわしいかの議論を始めましょう」と記事を締めた。
23年はMLBで大谷翔平投手が10冠以上を獲得したが、井上にも同様の期待がかかる。井上は「そこを目指して試合をクリアしていないが、評価していただくのはうれしい」と反応していた。【藤中栄二】
ボクシングで史上2人目となる2階級での主要4団体王座統一を果たした井上尚弥選手(30)=大橋=の強さを元世界王者はどう見たのか。27日に取材に応じた世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級元王者の山中慎介さん(41)は、井上選手の規格外のパンチ力に舌を巻いた。
「相手のガードの上へのパンチでも、あれだけダメージを与えられる選手は、まずスーパーバンタム級ではいない。重量級のパンチャーなら分かるけど……」