仏教美術
ちょっと気になる逸品の世界
僧形似影像
2022-10-08
facebook江場 琳觀さん曰く
《 玄宥僧正像 》
10月4日は真言宗智山派 総本山智積院を再興された玄宥僧正(げんゆうそうじょう)のご命日。
出張などが重なり遅ればせながらの投稿ですが、そのご偉功とご遺徳を偲んでいる。
真言宗智山派 総本山智積院化主第1世となられたお方の肖像である。
豊臣秀吉の根来攻めにより高野山に逃れて以来、玄宥僧正に智積院再興が許されたのは73歳の頃とされ、16年に及ぶ不遇のときを過ごしながらもいよいよ再興が叶ったと想像する。
制作においては、智積院にわずかに伝わる肖像画を手掛かりにその像容を手繰り寄せた。
場面や由緒は不詳とのことであるが、描かれた相貌を頼りに骨格をさぐり、人となりを表す要素を少しずつ丁寧に集めてゆく。
歴史や肖像画の中の僧正にお伺いを立てるように。
袈裟には牡丹唐草文を金泥で描き、単色に見える緋色の衣には近似する色で羯磨(かつま)と輪宝(りんぽう)を描き共糸の地紋様を。
肖像画に見る実に豊かな色使いの組紐には、描いた絵師の尊崇の念や、晴れの儀式を想起した。
お顔の表情には、刻まれた皺と鋭さをのぞかせる眼光に玄宥僧正の堪え忍んだ半生を、そして再興の喜びと寺門興隆の決意を込めた。
長野県 照光寺 蔵 2018年
総高さ970mm 像高585mm 仏寸(髪際高) = 一尺八寸
諏訪神仏プロジェクト
《 百済観音原型 》
2022-08-22
Facebook 江場 琳觀さん曰く
《 百済観音原型 》
このところ取り組んでいる大規模なプロジェクトで、古色仕上げや、飾り金物の資料をと《百済観音 原形》を振り返っている。
画像の、法隆寺に伝わる国宝 百済観音の3分の1の大きさの本像は、法隆寺像と同寸模刻(一部補作)の原型として精密を期し制作した。
これらの資料をもとに探求を進めたが、彩色の下地厚などは単純に3分の1に換算した数値には収まらない。
そもそも小さくなっても木材に一定の塗膜を作る厚みはさほど変わらないうえに、わずかな下地の厚みの違いでいとも簡単に表情など微細なニュアンスが変化してゆく。
多くの人に親しまれるイメージを再現するのは容易ではないのだ。
こうして眺めていると、ありありと制作当時の想いがその熱量を伴って語りかけてくる。
かけた手間に嘘はなく、
静謐な佇まいの中に、ときに雄弁な声を聞くならば、
いかなる仕事も全霊をもって臨みたいものである。
東大寺法華堂 執金剛神 彩色再現CG(2014年制作)
2022-02-19
《 はすのうへ – Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ - 》 江場 琳觀 制作2020年 〜 2021年
2022-01-07
銀座 蔦屋書店 展示作品のご紹介02
《 はすのうへ – Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ - 》
江場 琳觀 制作2020年 〜 2021年
木地(淡彩)仕上げ
材 = 桂(顔料 金 プラチナ アクリル彩)
「水面から伸びた一輪の蓮の花に、すっと菩薩が現れる。静謐なたたずまいと、この世の理(ことわり)を超えた浮遊感をまとって。」
三体で計画された三部作で、大きさの違いは三尊仏を思わせる。
お顔の向きと印相が異なり、それぞれの印相でそっと持った蓮華を慈しむ姿はバリエーションに富みながら、琳觀の代表作の一つ《迦陵頻伽》に通じる現世と仏の世界の邂逅が表現されている。
リアルに作り込まれた蓮の花と波紋を描く水面は、琳觀の長年取り組んできた代名詞的なモチーフであり、そこには琳觀の《山川草木悉皆成仏》という眼差しが息づいている。
金銅仏のようなシンプルな構成の中にも琳觀作品のリアリズムが同居しており、両腕から垂下する天衣からは、飛鳥仏、とりわけ百済観音へのオマージュが見て取れ、桂材の褐色は古仏に通じる落ち着いた雰囲気を醸成している。
【会期】2021年12月26日[日] - 2022年1月14日[金]
2022年1月1日はGINZA SIX休館
営業時間 10:00 - 22:30
GINZA SIX 6F 銀座 蔦屋書店 アートエディション前
【作家在廊日】20222年1月8日[土]13:00 – 16:00
※ 営業状況は急遽変更することがございます。詳しくは店舗HPをご覧ください。