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モンスター井上

【 ボクシング編 】

「これはもう勝てないでしょう」井上尚弥、1回に“衝撃のダウン”も6回KO勝利

2024-05-06
4団体統一王座の初防衛に実況も絶叫 © SPREAD
1回、ルイス・ネリからダウンを奪われ膝をつく井上尚弥 © 中日スポーツ 提供
初ダウン後の『8カウント』に見せた新たな凄み

◆パンチの振りが大きい…力んでいる

 確かに井上尚も人の子だった。これまで「モンスター」の異名通り、リング上で一切の隙をみせず、冷静に闘い、圧倒的な強さを誇ってきた。だが、入場時から明らかに気合が入りすぎている。東京ドームのチケットは完売し、超満員となる4万3000人が駆けつけた。観客で埋め尽くされた景色がよほどうれしく、高揚していたのだろう。

 ゴングが鳴る。井上尚が放つパンチの振りが大きい。いつもより力んでいる。試合のピークがいきなりやってきた。開始1分40秒。接近戦で井上が左アッパーから右フックを放とうとした瞬間、ネリが顔面への左フック。被弾した井上尚が倒れた。プロ・アマを通じて初のダウンだ。

 「(連勝が)止まっちゃう。こういう最後か…」

 セコンドの大橋秀行会長の頭に一瞬、敗戦がよぎった。まだ体が温まっていない試合早々にパンチを食らい、リングに沈んでいった数々のボクサーを見てきたからだ。

 「1ラウンドのパンチは思っている以上に効くんだよ。タイミングで倒されたのではなく、ネリは左をフルスイングしていた。尚弥は相当ダメージがあったと思う」

 大橋会長だけではない。リングサイドで見ていた井上尚の弟・拓真も目を疑った。

 「心臓が止まるんじゃないか、というくらい焦った」

◆まさか…東京ドーム4万人から悲鳴

 井上尚がリング上を転がった。会場は悲鳴に包まれる。誰もが目の前の光景を信じられない。ドームにいる4万人超の中で唯一冷静だったのが井上尚だった。

 非常事態に驚いたような表情を見せながら、キャンバスに片膝をつき、レフェリーが「カウント8」を数えるまでゆっくり休んだ。

 生涯初のダウンでパニックになってもおかしくない。焦ってすぐに立とうとして、足元がふらついたところをレフェリーに止められる選手も多い。

 大橋会長が感心した口調で言った。

 「やっぱりさ、倒されたら人はすぐに立とうとするんだよ。でも尚弥は(カウント)ギリギリまで休んで、ベテランみたいだったね」

 井上尚はその場面を振り返って、言った。

6回、ルイス・ネリ(左)からダウンを奪い、KO勝ちした井上尚弥 © 中日スポーツ 提供
7日付東京本社版の1面はボクシング井上尚弥です。
facebook 日刊スポーツ新聞社さん曰く
7日付東京本社版の1面はボクシング井上尚弥です。
4団体統一同級王者井上尚弥(31=大橋)が「初ずくめ」で防衛成功(WBAスーパー、IBF初、WBC、WBO2度目)した。WBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)の挑戦を受け、6回1分22秒、TKO撃破。1回に左フックを浴びてプロ初ダウンを喫したものの、計3度のダウンを奪い返す逆転勝利を収めた。34年ぶりの東京ドーム興行で日本人初のメインを務め、ハラハラ展開の名勝負を劇的勝利で締めた。日本初となる世界ベルト4本の防衛とWBCダイヤモンドベルトの奪取にも成功。拓真との兄弟同日防衛も初めて成し遂げた。
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