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闘いの歴史

闘いの記録 (戦争と人間)

~チャップリン『独裁者』の演説~

2020-05-20
チャップリンの映画『The Great Dictator』

チャップリンの名作映画『独裁者』(原題 "The Great Dictator")は,ヒットラーの台頭に脅威を感じたチャップリンが独裁者をユーモアを交えて批判するために1940年に制作した映画で,チャップリン初の台詞音声付きの映画でした。

▼私は以前,このスピーチを真似ようと思い,何度も何度も見返しているうちにあることに気が付きました。それは,チャップリンの視線と体の動きについてです。上の動画では,スピーチが始まって1分48秒までまっすぐ前を見据えて淡々としゃべっていますが。1分49秒で初めて顔を右に向けます。その後,左右を交互に見ながら,スピーチは次第にヒートアップしていきます。しかし,顔と体の向き以外,一切体の動きはありません。

▼通常,こうしたスピーチでは腕を振り上げたり,誰かを指さしたりと,手や腕の動きを伴います。ところがチャップリンはそうした動きを一切見せないのです。言葉の抑揚は次第に大きくなり,徐々に早口になりながらも,腕の動きを一切使わないことで抑制のきいた演技になっているのです。言葉の抑揚と表情,顔の向き。それだけで人の目をくぎ付けにしています。そしてこの動画では3分25秒,本当に最後の最後になって "Let us all unite!!"(団結しよう!)の叫びとともに左腕を掲げるのです。いわば,冒頭からこの3分25秒までの演技が,この高く掲げられた左腕に集約されているとも言えます。

▼これこそが,台詞を伴わぬ無声映画で磨き抜かれたチャップリンの才能なのでしょう。そして,台詞回しにしても,これだけのスピーチを淀みなく,しかもかなりの早口で,かつ,感情をこめ,聴く者を引き付けて離さぬような抑揚で語りつくしているのです。

Now let us fight to fulfill that promise.  Let us fight to free the world to do away with national barriers, to do away with greed, with hate and intolerance.  Let us fight for a world of reason, a world where science and progress will lead to all men's happiness.  Soldiers, in the name of democracy, let us all unite!!!!!

(今,その約束を果たすために戦おう。世界を解放するために戦おう。国境を廃止し,貪欲さをなくし,憎しみと不寛容をなくすために。理性の世界を求めて戦おう。科学と進歩がすべての人間の幸福につながるような世界を。兵士たちよ,民主主義の名のもとに団結しよう!)

https://youtu.be/40OfHEPnH6U

チャップリン『独裁者』の演説

2020-05-20
https://youtu.be/40OfHEPnH6U
I'm sorry.  I don't want to be an emperor.  That's not my business.  I don't want to rule or conquer anyone.  I should like to help everyone if possible.  Jew, Gentile, black men, white.
(申し訳ない。私は皇帝になりたくはない。それは私の務めではない。私は誰も支配したり征服したりしたくないのだ。できることなら全ての人を助けたいのだ。ユダヤ人も,ユダヤ人以外の人々も,黒人も,白人も。)

We all want to help one another.  Human beings are like that.  We want to live by each other's happiness, not by each other's misery.  We don't want to hate and despise one another.  In this world there's room for everyone and the good earth is rich, and can provide for everyone.  The way of life can be free and beautiful. 
(私たちは皆,お互い助け合いたいのだ。人間というのはそういうものなのだ。私たちはお互いの不幸によってではなく,お互いの幸福によって生きたいきたいのだ。お互いを憎んだり見下したりしたくないのだ。この世界では全ての人に機会が与えられ,肥沃な地は豊かであり,全ての人を養ってくれる。生き方は自由で美しいものになりうるのだ。)

But we have lost the way.  Greed has poisoned men's souls, has barricaded the world with hate, has goose-stepped us into misery and bloodshed.  We have developed speed, but we have shut ourselves in.  Machinery that gives abundance has left us in want.  Our knowledge has made us cynical, our cleverness hard and unkind.  We think too much and feel too little.
(しかし私たちはその生き方を失ってしまった。貪欲さが人間の魂を汚し,世界を憎しみで囲い込み,私たちをグースステップ式行進*で歩かせて悲惨な殺戮状態へと追い込んだ。私たちは速さを発達させたが,自らを閉じ込めてしまった。豊かさを与えてくれる機会は私たちを欠乏状態にさせた。私たちの知識は私たちを冷笑的にさせ,私たちの賢さは私たちを無常で不親切にさせた。私たちはあまりにもものを考えすぎるようになり,ものを感じなくなっている。)
*グースステップ式行進:第二次世界大戦中のドイツ兵の行進に見られた,膝を曲げず脚を高く上げる行進の仕方

More than machinery we need humanity.  More than cleverness we need kindness and gentleness.  Without these qualities, life will be violent and all will be lost.  The aeroplane and the radio have brought us closer together.  The very nature of these inventions cries out for the goodness in men, cries out for universal brotherhood for the unity of us all.
(機械以上に私たちが必要なのは人間性だ。賢さ以上に私たちが必要なのは優しさだ。これらの資質がなければ,生きることは暴力的になり,すべてが失われるだろう。飛行機やラジオは私たちをより近づけた。これらの発明品のまさにその性質が,人間の善良さを大いに必要とし,私たち全ての団結のための世界的な兄弟愛を必要としている。)

Even now my voice is reaching millions throughout the world, millions of despairing men, women and children ― victims of a system that makes men torture and imprison innocent people.
(今も私の声は世界中の多くの人々に届いている。絶望しかけている男性にも,女性にも,幼き子どもたちにも。人間に苦しみを与え無実の人々を収監する体制の犠牲者たちに。)
To those who can hear me, I say, "Do not despair.  The misery that is now upon us is but the passing of greed, the bitterness of men who fear the way of human progress, the hate of men will pass and dictators die.  And the power they took from the people will return to the people.  And so long as men die, liberty will never perish"
(私の声が聞こえている人々に私は言う。「絶望するな」と。今,私たちにのしかかっている不幸はつかの間の貪欲さ,すなわち,人間の進歩の道のりを恐れる人々の敵意に過ぎないのだ。人間の憎しみは通り過ぎ,独裁者は死ぬ。そして独裁者が人々から奪った権力は人々のもとに帰るのだ。そして人に寿命がある限り[独裁者は死ぬのだから],自由は決して消えない。)

Soldiers, don't give yourself to brutes ― men who despise you, enslave you, who regiment your lives, tell you what to do, what to think and what to feel, who drill you, diet you, treat you like cattle, use you as cannon fodder.
(兵士たちよ,あの人でなしの連中に自らを譲り渡すな。奴らは諸君を軽蔑し,奴隷にし,諸君の暮らしを統制し,諸君が何をすべきか,何を考えるべきか,何を感じるべきかを教え,諸君をしごき,諸君の食い扶持を減らし,諸君を家畜のように扱い,諸君を大砲の餌食として利用しているのだ。)

Don't give yourselves to these unnatural men!  Machine men with machine minds and machine hearts!  You are not machines!  You are not cattle!  You are men!  You have a love of humanity in your hearts.  You don't hate.  Only the unloved hate the unloved and the unnatural.  Soldiers, don't fight for slavery.  Fight for liberty!!
(あの残酷な連中に自らを譲り渡すな!機械の頭と機械の心を持った機械の奴らに!諸君は機械ではない!諸君は家畜ではない!諸君は人間なのだ!諸君の心の中には人類愛がある。諸君は憎むことはない。愛されぬ者だけが愛されぬ者と残酷な者を憎むのだ。兵士たちよ,隷属を求めて戦うな!自由のために戦うのだ!)


In the seventeenth chapter of St. Luke it is written: "The kingdom of God is within man."  Not one man, nor a group of men, but in all men!  In you!  You, the people have the power!  The power to create machines.  The power to create happiness.  You, the people have the power to make this life free and beautiful, to make this life a wonderful adventure.  Then in the name of democracy, let us use that power.  Let us all unite!!!!
(ルカの福音書第17章にはこう書かれている。「神の国は人のうちにあり」と。一人の人間でもなく,集団でもなく,すべての人間の中に!諸君の中に!諸君には力がある!機械を生み出す力が。幸福を生み出す力が。諸君,人民がこの世を自由で美しいものにする力を持っているのだ。この世を素晴らしき冒険にする力を!そして民主主義の名のもとに,その力を使おう。団結しよう!)

 Let us fight for a new world.  A decent world, that will give men a chance to work, that will give you the future and old age a security.  By the promise of these things, brutes have risen to power.  But they lie.  They do not fulfill that promise.  They never will.  Dictators free themselves, but they enslave the people.
(新しい世界のために戦おう。人に働く機会を与え,諸君に未来を,老人に安心を与えるまっとうな世界のために。こうしたものを約束することで,残酷な連中は権力の座に上り詰めた。しかし彼らは嘘をついている。彼らはその約束を果たしてはくれない。これからも決して果たすことはないだろう。

Now let us fight to fulfill that promise.  Let us fight to free the world to do away with national barriers, to do away with greed, with hate and intolerance.  Let us fight for a world of reason, a world where science and progress will lead to all men's happiness.  Soldiers, in the name of democracy, let us all unite!!!!!
(今,その約束を果たすために戦おう。世界を解放するために戦おう。国境を廃止し,貪欲さをなくし,憎しみと不寛容をなくすために。理性の世界を求めて戦おう。科学と進歩がすべての人間の幸福につながるような世界を。兵士たちよ,民主主義の名のもとに団結しよう!)

A・ヒトラー

2020-06-13
Facebook 佐々木信雄

【20世紀の記憶 1921(T10)年】
 

(アドルフ・ヒトラー)
*7.29/独 アドルフ・ヒトラーがNSDPA(ナチ党)の党首に就任。規約を改正して無制限全権を握る。
 

 オーストリア=ハンガリー帝国に生まれたアドルフ・ヒトラーは、のちにドイツ国籍を獲得して、第一次世界大戦に義勇軍伝令兵として参加した。西部戦線で毒ガス攻撃を受けて障害を受けたヒトラーは、収容された野戦病院でドイツの降伏を知り、大きな精神的ダメージを受けた。
 

 戦後も軍属として、新興政党などの諜報に従事する中、その諜報対象であった「ドイツ労働者党」(DAP)の反ユダヤ主義、反資本主義に惹かれて入党する。天才的な演説で民衆を引き込む才能を見込まれたヒトラーは、すぐに党幹部となるとともに、党名を「国家社会主義ドイツ労働者党」(NSDAP、ナチスは蔑称)と改名させる。
 

 この日1921年7月29日、党内で分派闘争が起きると、それに乗じて党執行部のクーデターを引き起こし、ヒトラーが第一議長に指名された。彼は、唯一絶対の指導者とする独裁権(指導者原理)を要求し、周囲からは「Führer」(フューラー、指導者)と呼ばれ始めた。
 

 ヒトラーは、ドイツ革命中、共産主義者などの排除などで功績のあった民兵組織フライコール(ドイツ義勇軍)に影響力をもったエルンスト・レーム大尉らによって「突撃隊」(SA)を組織させ、実力行使で党勢を拡張していった。
 

 突撃隊は「ミュンヘン一揆」での蜂起失敗などをへて、街頭闘争や政敵弾圧などに力を発揮したが、ヒトラー・ナチスにとって絶対服従的な組織ではなく、その後、ヒトラー直属の「親衛隊」(SS)によって、レームなど幹部が粛清され(長いナイフの夜)、突撃隊も、親衛隊の配下に改組された。
 

 ドイツ革命の時期には、多数の政党が乱立対立し、しばしば実力行使で党勢拡張をはかった。政党の集会や演説会の警備を名目に、各党は準軍隊組織を抱え、他党の政治活動の妨害などで衝突することが多かった。ヒトラー・ナチスは、元軍人や義勇軍兵士を「突撃隊」としてかき集め、最も有効に活用したと言える。
 

『ヒトラー演説 - 熱狂の真実』 (中公新書) 2014/高田博行(著)
https://www.amazon.co.jp/…/4121022…/ref=pd_lpo_sbs_14_img_2…
 
 
映画『独裁者』"The great dictator" 1940年/チャールズ・チャップリン
https://www.youtube.com/watch?v=78bYriDPUww
 

〇この年の出来事
*2.8/ソ アナーキズムの巨星クロポトキン、墜つ。
*3.8/ソ ロシア共産党大会が開かれ、レーニンの新経済政策「ネップ」案が採択さる。
*5.5/中 孫文が上海で大総統に就任。第二次広東政府を樹立。
*8.2/ソ 飢餓に苦しむソビエトで、レーニンが諸外国の援助を要請。
*8.20/米ソ ソビエト飢餓救済で米ソが協定。
*11.4/独 ヒトラーが「突撃隊」(SA)と命名したナチスの実力部隊が、共産主義者と大乱闘。
 

*ブログで読む>https://naniuji.hatenablog.com/entry/20170629

ラストエンペラー来日

2020-06-20

詳細

4月6日、満州国皇帝が初めて来日。
昭和天皇は東京駅のホームまで出迎えに行き、握手を交わしました。


https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009170006_00000

パリ不戦条約

2020-07-09
佐々木 信雄さんのFbより

『Get Back! 20's / 1928年(s03)』
 

(パリ不戦条約)
○8.27 [フランス] パリで、不戦条約が日本などの15か国によって調印される。「パリ不戦条約」
 

 第一次世界大戦での反省から、諸国間で「国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄する」との不戦条約が結ばれた。パリで条約が調印されたので「パリ不戦条約」と呼ばれ、当初交渉を始めたのは米仏間で、米国務長官ケロッグと仏外相ブリアンの名前から「ケロッグ・ブリアン協定」とも呼ばれる。
 

 紛争は戦争ではなく平和的手段により解決すると規定され、「戦争放棄に関する条約」とされる。それまでの19世紀的戦争観によれば、主権国家は相互に対等であり、個人間の「決闘」のごとく、互いの存在と尊厳を守る手段として、国家は戦争に訴える権利や自由を有すると考えられていた。
 

 不戦条約はこの国際法の無差別戦争観を否定するものであり、国際的に戦争を放棄する条約は画期的であった。条約違反を超越的に抑止する機関はなかったが、不戦条約違反とされた国があれば、他の諸国は自動的に制裁権(制裁戦争)が履行できるとされた。
 

 ただし、米国などから「自衛の戦争は除く」という制限が付け加えられたため、結果的に「(自衛を除く)侵略戦争」のみを禁止する条約となった。しかも「侵略」の定義が「当事国の自国裁量権に任せる」とされたため、何でも自衛のためと理屈つけられる抜け道だらけの条約となった。あの大東亜戦争をも含めて、その後戦争を引き起こした国は、いずれも侵略戦争であることを認めたためしがない。
 

 不戦条約が物理的な抑止力の無い理念的なものとなったため、その後各国は「集団安全保障」体制を組むことになる。議論になった「集団的自衛権」は、集団安全保障体制に限定されるものではないが、少なくとも集団的自衛権を行使できることが、集団安全保障に必要な双務的要件であることは自明である。
 

*この年
ダンスホールが人気/オカマ帽・ラッパズボン・ミニスカートが流行/天皇への直訴が6件を数え、奉書紙の購入には住所氏名の明示が義務となる
【事物】国産電気吹込式レコード/普通選挙
【流行語】弁士中止/人民の名において/モン・パリ/マネキンガール
【歌】波浮の港(佐藤千夜子)/アラビアの唄(二村貞一)
【映画】新版大岡政談(伊藤大輔)/十字路(衣笠貞之助)/暗黒街(米)
【本】「マルクス・エンゲルス全集」(改造社)/坪内逍遥訳「沙翁全集」/林芙美子「放浪記」(女人芸術)/川上肇「資本論入門」/講談社「講談全集」
 

*ブログで読む>https://naniuji.hatenablog.com/entry/20160902

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