兵戈無用(ひょがむよう)
「兵戈無用」(武器を用いない闘いの歴史の中で、人は如何に生きたか・・・。)
根深い先入観「被害者をおとしめた
映画『コッホ先生と僕らの革命』予告編
死せる李克強、絶対権力者・習近平をビビらせる © アサ芸biz
中国・三国時代の有名な故事である。蜀の諸葛孔明が陣中で病死し、それを察知した魏の将軍・司馬仲達が蜀軍に攻め入ったところ、蜀が反撃の構えを見せたため、仲達は孔明が死んだと見せかけた罠だと思い込み、あわてて退却した。つまり、生前の威光が死後にも残っており、人々を震え上がらせるという例えである。
李克強前首相の死から半月を経て、習近平主席が彼の死に怯えている様子は、まるで「死せる孔明、生ける仲達を走らす」のようだ。
李克強前首相急死の一報が中国中央電視台(CCTV)で伝えられたのは、死亡した翌日。中国時間の10月27日午前8時の定時ニュースだった。
三島由紀夫から死後に届いた手紙
川端康成が日本人初のノーベル文学賞を受賞して2年後の1970年11月25日、日本に激震が走った。三島由紀夫が東京・市ケ谷の自衛隊に乱入し、クーデターを訴えた後、割腹自殺を図った。
ドナルド・キーンさんが「天才」と称した現代作家の死の背景には何があったのか。ニューヨークの自宅で悲報に接したキーンさんの驚きを、翌年の米ニューヨーク・タイムズ紙に寄せたエッセーで見てみよう。事件後、最も早い時期に書かれたまとまった文章である。
日本文学者のドナルド・キーンさん(1922年生まれ)は、18歳の時に「The Tale of Genji(源氏物語)」と出会い、96歳で亡くなるまで、日本の文学や文化の魅力を伝えることに没頭し、膨大な研究成果を発表し続けた。日本の「大恩人」はどんな時代を生き、私たちに何を伝え、未来に何を残そうとしたのか。本人の英文や、2022年4月に創刊100年を迎えた英字「The Mainichi」の紙面とともに、この1世紀の時空を旅する。
(文・森忠彦=毎日新聞記者、ドナルド・キーン記念財団理事。キーンさんの原文は同財団から掲載の許可を得ています。財団ホームページ=https://www.donaldkeene.org/)
Donald Keene(ドナルド・キーン)
1922年6月18日、米ニューヨーク市ブルックリン地区生まれ。日本文学研究者。コロンビア大学名誉教授。コロンビア大学大学院、ケンブリッジ大学研究員を経て53年から京都大学大学院に留学。谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫などの文人と交流した。半世紀以上にわたって日米を行き来しながら、日本の文学、文化の研究を続け、その魅力を英文で世界へと発信した。2008年には文化勲章を受章。11年の東日本大震災の直後に、日本国籍を取得。雅号は「鬼怒鳴門」。2019年2月24日、96歳で永眠。主な著書に「日本文学の歴史」「百代の過客」「Emperor of Japan: Meiji and His World, 1852-1912」(邦訳「明治天皇」)など。