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仏教美術

ちょっと気になる逸品の世界

日本最古刺しゅう復元 奈良・中宮寺に奉納、一般公開へ

2023-05-31
facebook Sumie Nagakusaさん曰く

聖徳太子の没後、追慕する妃の願いでつくられた日本最古の刺しゅう「天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう、7世紀、国宝)」の一部を復元して装飾した「被衣(かつぎ)」を京都の伝統工芸、京繍(きょうぬい)の第一人者である長艸(ながくさ)敏明氏が制作した。繍帳を所蔵する中宮寺(奈良県斑鳩町)に6月1日に奉納し、2日から一般公開する。

被衣とは頭からかぶる着物のこと。絹製で着丈は約90センチあり、同寺に伝わる聖徳太子二歳像(13世紀)がまとう。紫色の羅(ら=薄い網目状の織物)に鳳凰(ほうおう)や亀、天人、日月などの図像が色鮮やかな糸で表現されている。奈良国立博物館の三田覚之主任研究員による監修のもと、古代の素材や技法、色調を復元し京都市にある長艸氏の工房で6人がかりで仕立てた。

長艸、三田両氏は約20年前から繍帳の復元研究に取り組んでおり、中宮寺が聖徳太子二歳像の被衣を新調するのを機に作成した。奉納に先立つ5月17日、奈良に私的旅行で訪れた上皇ご夫妻がほぼ完成した状態を同寺で観賞されたという。

長艸氏によると、復元した刺しゅうは現代の糸と違って強い撚(よ)りをかけているのが特徴で「生地が硬く、再現が難しかった」。三田主任研究員は「一歩ずつ研究を積み重ねてきた成果を形にできた」と話している。

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