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仏教美術

ちょっと気になる逸品の世界

《 黄不動像 》

2022-06-23

Facebook 江場 琳觀さん曰く


《 黄不動像 》
ひと月ほど前、在家のお客様に黄不動像をお納めさせていただいた。
爽やかな気候の午後にお伺いすると、「特別にお祀りする準備もなくて」とおっしゃる和室は、床の間、床脇ともに綺麗に整えられていた。
ありがたいことに、以前からいつか私の作品をと温めておられたとのことで、ようやくこの日を迎えられた私も安堵感を覚えていた。
智証大師 円珍(814年〜891年)が感得された黄不動尊を最初に作品として制作したのは、京都の師匠の工房を独立すると決めた年のことで、20年程前のことになる。
——  虚空に金人あらわる  ——
「我、不動明王なり。帰依するならば汝を守護する。」
石龕で座禅をしていた円珍の前に忽然と現れた金人は、自身の姿を描き帰仰するよう勧めたといい、この金色不動明王が黄不動と呼ばれ今日に伝わっている。
青不動、赤不動と呼ばれる不動尊からすればわずかしか作例のない黄不動であるが、自らを鼓舞し守護する存在は、当時、独立を志していた私には深く響いた。
本像では、肉身も楠材の木地(素地)のままとし、装身具のみ金色としているが、虚空に浮かぶ金人の聖性はそのままに失われることはなかった。
柔らかい日差しを取り入れた部屋の、聚楽の壁に影を落とすお像は確かにその場に馴染み始め、ご当家を守護する存在となられてゆく様であった。
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